量子放射エネルギー研究分野 京都大学エネルギー理工学研究所 エネルギー生成部門 量子放射エネルギー研究分野 京都大学エネルギー理工学研究所
概要/outline

    <当研究分野の主な研究領域>
    当研究分野では、高エネルギー電子ビームを用いた新量子放射エネルギーの発生と利用の研究を行っています。代表的な新量子放射エネルギーである自由電子レーザー(Free Electron Laser:FEL)は、加速器からの高輝度電子ビームと光ビームとの相互作用を応用した波長可変、かつ、大出力、高効率なコヒーレントなレーザーで、次世代の光源として期待され、西播磨ではX線領域のFEL 施設が稼働開始しています。本研究分野では、宇治キャンパスに独自の中赤外領域の小型自由電子レーザー施設:KU-FEL を完成させました。この施設は電子を40MeV まで加速可能な直線加速器を使用し、2008年3月に波長12.4μm でFEL 発振を観測しました。さらに2008年5月には波長13.6μmでFEL 飽和を達成しました。  現在では、発振可能な波長を拡大して3.6〜25μm でのFEL の利用が可能になっています。KU-FEL が発振可能な中赤外領域は分子固有の振動準位が数多く存在し、「分子の指紋領域」とも呼ばれています。KU-FEL の波長可変赤外レーザーを応用し、特定のフォノンモードを励起するといった光エネルギー材料研究を共同利用等を通じて進めています。また、本研究分野では、安全安心な社会に貢献する核管理・セキュリティ技術として、レーザーコンプトンガンマ線を用いた同位体CT の開発研究等を行うとともに、独自のバルク高温超伝導体を用いた短周期アンジュレータの開発や、新奇な光源として注目を集めているTHz 放射の開発研究を行っています。



    FEL(自由電子レーザー)
    高輝度な電子ビームをアンジュレータで蛇行させて、光のビームと重畳させると、両者の相互作用によって電子ビームはミクロにバンチングして光を増幅し、コヒーレントなレーザーを発生することができます。KU-FEL(京都大学赤外自由電子レーザー)施設および関連する研究課題の詳細はこちらのページをご覧ください。



    ○レーザーコンプトンガンマ線の発生と応用
     小型加速器からの電子ビームと大出力レーザーを衝突させる事で、単色性の高いガンマ線を発生する事ができます。この単色ガンマ線は通常用いられるX線と比べ透過力が高く、また、同位体に特有の共鳴状態を観測する事ができます。この図は、この原理を利用してコンテナ等に隠匿された危険物を検知するために、現在開発を進めている装置の概念図です。

    ガンマ線ビーム用いた隠匿された同位体の検知装置の概念図



    ○バルク超伝導体を用いたアンジュレータの開発
    一般にアンジュレータには永久磁石が用いられていますが、その性能は磁石の特性により制限を受けています。これまでにない超高性能なアンジュレータの実現を目指し、塊状の超伝導体(バルク超伝導体)を用いた新方式のアンジュレータを考案し開発を続けています。永久磁石型で到達可能な磁場強度を数10%超える試験装置の製作に成功しており、永久磁石型の2〜3倍の磁場強度を目指し研究を進めています。

    バルク超伝導体を用いた新型アンジュレータの模式図



    ○THz領域の高輝度光源の開発と応用